個人事業主は、ずっと申告していなくても青色申告を取り消されません。

先日、確定申告の無料相談を担当してきました。

当日のことなどは日を改めてレポートしますが、担当された他の税理士さんとの会話のなかで、青色申告の取消し要件について、個人と法人とでは異なる点があることが話題となりました。

 ※画像は、連休中遊びに行った戸越銀座でのパシャリ。

青色申告の取消しとは

青色申告を始めるかは納税者の任意ですが、青色申告を止めたい場合も「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出すれば、止めることはできます。

が、青色申告を止めたくなくても、一定の要件に該当した場合には、税務署から取消しを受けることがあります。

法人税法上の取扱い

法人税法127条に(青色申告の承認の取消し)に関する条文がありますが、その条文を根拠とした実務運営指針が国税庁から公表されています。

公表内容を簡単に整理すると、

・帳簿書類を提示しない場合

・帳簿書類の備付け等について、税務署長の指示に従わない場合

・隠ぺい、仮装等の場合

・無申告又は期限後申告の場合

・電子帳簿保存の承認の取消しを受けた場合

以上の要件に当てはまると、一部の要件では取消しを免れる場合がありますが、原則的には、青色申告は取消しとなります。

所得税法上の取扱い

所得税法第150条に(青色申告の承認の取消し)に関する条文がありますが、こちらもその条文を根拠とした実務運営指針が国税庁から公表されています。

公表内容を簡単に整理すると、

・帳簿書類を提示しない場合

・帳簿書類の備付け等について、税務署長の指示に従わない場合

・隠ぺい、仮装等の場合

・電子帳簿保存の承認の取消しを受けた場合

以上の要件に当てはまると、一部の要件では取消しを免れる場合がありますが、原則的には、青色申告は取消しとなります。

法人税法と所得税法で違う点

みなさん、上で確認した法人税法上の取扱いと所得税法上の取扱いとで違う点があることにお気づきになりましたでしょうか?

法人税法上は取消しの要件となっている
無申告又は期限後申告の場合
が、所得税法上は要件となっていないのです。

無申告又は期限後申告の場合とは、2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合です。特別の事情があってそのようになってしまった場合には、取消しを免れることもありますが、原則的には、2年続けて期限までに申告できなかったら、青色申告を取り消されます。

しかし、これは法人にだけ適用される規定で、個人事業主の方は、

・長年、申告していなかった

・2年続けて3/15までに申告できていなかった

といった事情があっても、青色申告が取り消されることはありません。

なぜこんな取扱いの違いが生まれたのかを考えてみました

所得税法では、還付金を受け取るための確定申告(還付申告)は、5年間遡って行うことが可能です。これは当然、青色申告の方にも適用があります。

たとえば、

平成26年…期限内申告(青色申告)

平成27年…無申告

平成28年…無申告

平成29年…無申告(青色申告をすれば還付を受けられた)

このような申告の状況で、もし所得税法にも無申告又は期限後申告の場合の要件があったとすると、平成27年、平成28年と無申告なので、平成29年には青色申告が取り消されることから、還付申告ができなくなってしまいます。

つまり、還付申告は5年間遡ってできるという規定がある一方で、2年連続期限内申告をしないと青色申告を取消すという規定があると、一種の矛盾が生じてしまいます。

なので、こういった矛盾が起きないようにするために、所得税法では無申告又は期限後申告の場合の要件を設けていないのかなと思いました。

※あくまで個人的な考えです。

今回のまとめ

所得税法をしっかり勉強されている方にしてみれば、

「何を当たり前のことを!」

とお思いになられるかもしれません。

しかし、法人の方を中心に業務をしていると、『青色申告は、無申告または期限後申告を2年続けるとアウト』が頭にこびりついているため、個人の方も同じ取り扱いになっていると誤認しかねない取扱いです。(実際、私も誤認していました。なんと恥ずかしい。。。)

先入観を持たずに、一つ一つの取扱いを丁寧に条文と照らし合わせないといけないということを改めて感じました。

ジル観察日記

雑誌を読む妻のお膝の上でのんびり。

「たまには僕の膝の上にも来ませんか?」