退職して帰国する外国人の税金の取扱い

人手不足の昨今、中小企業でも外国人労働者を雇うことは珍しくありません。

貴重な戦力として大変助かりますが、「結婚するから」「親の体調がすぐれなくて」といった理由で、突如退職して、国に戻らないといけないことがあるかもしれません。

外国人でも日本に居住して働いていれば、所得税と住民税がかかりますが、退職して帰国するに際し、それらの税金はどのように取り扱うことになるのでしょうか。

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先日20年ぶりにディズニーランドへ行きました。当時はディズニーに全く興味がなく、イヤイヤ知人に付き合ったのですが、今の私は完全なディズニー信者。生ミッキーさんとも写真を撮ることができ、大興奮でした。

所得税の取扱い

退職する月の給料まで所得税の源泉徴収を行います。とともに、その年の1月から退職した月までの給与・賞与を対象に年末調整を行わなければなりません。

年末調整なので、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除を適用してもちろん大丈夫です。ただし、これらの控除は、『居住者である期間中に支払ったものだけが控除対象となること』が所得税法上で規定されていますので、帰国するときまでに支払った社会保険料、生命保険料だけを取り込むように注意してください。

緊急であったり、退職する時期によっては、控除証明書の添付が間に合わず、保険料控除申告書だけしか提出がないといったことがあるかもしれません。

しかし、所得税法第102条第3項第一号では、「これらの控除を受ける金額の計算の基礎となる金額その他の事項を証する書類」の添付等が必要と規定されています。つまり、保険料控除申告書でご本人が申告した金額をそのまま信じて年末調整を行うのは、税法には則していません。

たとえば、引落がかかっている通帳のコピー(不要な入出金履歴や残高は黒塗りでもよいです。)を控除証明書の代替書類として提出してもらい、確実にご本人が帰国するときまでに支払ったもの・金額であることを説明できるようにしておきましょう。

また、扶養控除、配偶者控除など人に関する所得控除も適用可能ですが、帰国する時点での状況により適用可否は判断してください。

住民税の取扱い

まずは、住民税の課税体系について、以下の図をご覧ください。

言葉で説明しますと、たとえば、×1年の所得に対し、×2年1月1日を賦課期日として、そのとき住所を置いている市区町村が住民税額を計算して、納税者は×2年6月以降に給料から徴収されます。

よく誤解される方がいるのですが、住民税は、所得税のようにその月の給料に対して計算がされているわけではありません。前年の所得に対して計算された住民税を12か月で割った金額をその月の給料から徴収されているのです。

6月1日から1月1日までに帰国した場合

×1年所得に対する住民税

たとえば、×2年6月1日から×3年1月1日までに退職(帰国)した場合、賦課期日の×2年1月1日には日本国内に住所があるため、×1年所得に対する住民税は支払う義務があります。

つまり、退職した月以後翌年の5月末までに徴収すべきであった住民税額はチャラになるわけではなく、きちんと残り全て納めなければなりません。

その納め方については、地方税法第321条の7第1項で、

特別徴収の方法によつて徴収されないこととなつた金額に相当する税額は・・・普通徴収の方法によつて徴収しなければならない。

と、各個人が金融機関等で納付することが規定されています。しかし、ご本人が帰国することを考えると、地方税法第321条の5第2項の

・・・総務省令で定めるところによりその事由(=退職※付記)が発生した日の属する月の翌月以降の月割額を特別徴収の方法によつて徴収されたい旨の納税義務者からの申出があつた場合・・・には・・・当該月割額の全額を徴収し・・・

という規定に基づき、最後の給料から残りの住民税額を徴収するのが実務では一番多い対応です。

×2年所得に対する住民税

×3年1月1日には日本国内に住所がないので、×2年所得に対する住民税は発生しません。

1月2日から5月31日までに帰国した場合

×1年所得に対する住民税

6月1日から1月1日までに帰国した場合と同様に、退職した翌月以後5月末までに徴収すべきであった住民税額は完納しなければなりません。

各個人が納付する方法もありますが、最後の給料から残りの住民税額を徴収する方法が実務で用いられることが多いです。

×2年所得に対する住民税

賦課期日の×3年1月1日には日本国内に住所があるため、×2年所得に対する住民税を支払う義務があります。

「払うことになる期間はずっと日本にいないのだから、住民税を払わなくてよいのでは?」

と思われる方もいるかもしれませんが、住民税の減免が認められるケースとしては、天災に見舞われてしまったり、生活保護を受けるくらい生活が著しく困難になってしまったといった場合に限られ、帰国したという事由だけで減免を受けることはできません。

というわけで、×2年所得に対する住民税も支払わなければなりませんが、その税額は5月の中旬頃にわかるので、その前に退職をしているとそもそもの税額がわからず、最後の給料から徴収することができません。したがって、各個人で納付をしてもらうこととなります。

事業主が行うべきこと

退職者の住所が所在する市区町村に給与所得者異動届出書を提出して、各個人で納付をする方法に切り替える手続きを行ってください。この届出書の提出がないと、会社が立替で納付し、あとで本人から徴収しなければなりません。非常に面倒ですので、忘れないように注意してください。

帰国する外国人が行うべきこと

帰国後は住所が国内になくなるわけですから、税金の通知書を受け取って、きちんと納税をしてくれる人(「納税管理人」と言います。)を決めて、市区町村に納税管理人を届け出る申告書を提出してください。

その届出を行った後は、税金の通知書が納税管理人の手元に届きますので、納税に必要な資金を渡して、代理で期限までに納税を行ってもらうことになります。

納税管理人を定めていないと税金の通知書が届かなくなり、最悪の場合、期限までに納税ができず、延滞税という罰金がかかってきてしまうことも想定されます。ですから、納税管理人の申告は必ず行ってください。(事業主は、このような手続きが必要となることを説明しておいてあげると親切ですね。)

退職者の住民税を会社が負担した場合

会社と本人が取り決めして、退職後(帰国後)の住民税は会社で負担してあげる、なんてことがあるかもしれませんが、税務上は、この行為は本人への給与と認定されます。

もう少し具体的に説明すると、帰国した非居住者に対する国内勤務の対価=非居住者に対する国内源泉所得に該当することとなり、20.42%の税率で源泉徴収が必要になります。
※源泉徴収税額の算出方法※
住民税の負担額を税引後の金額と考えます。

源泉徴収税額=住民税の負担額÷(100%-20.42%)×20.42%

労使間で合意していることに対して非を唱えたくはありませんが、税務的にはこのようなデメリットがあるので、あまりオススメしたくはありません。

今回のまとめ

退職して帰国する外国人の税金の取扱いについて、説明してきました。

今年の4月1日に入管法が改正されて、今後は外国人労働者の受け入れが拡大していく見通しです。

今は外国人労働者がいないので関係ないと思っていても、近い将来、外国人を採用し、冒頭のようなケースに遭遇なんてことがあるかもしれません。

そんなときには、今回取り上げた記事を参考にしていただければ幸いです。

ジル観察日記

妻の化粧品に興味津々です。

「ボク、化粧したらもっとカワいくなるかな・・・」