海外で発生した経費を円換算するときに使うレートは?

海外出張時に発生した経費を円換算するときにどの日のレートを使うべきか?

領収書に印字された日、事前に仮払いした日、カードの引落日、経費精算日、帰国日…いろいろ思い付きますが、税務上での合理的なレートについて考えてみたいと思います。

●●私が保有する外貨●●
数年前に台湾へ旅行に行ったときに両替した現地通貨(+現地のICカード)です。
また行くこともあるだろうと思い、キープし続けて何年も経ちました。
そろそろ円に戻すべきか・・・(悩)

原則的な考え方

法人税法第六十一条の八第1項では、次のように規定されています。

内国法人が外貨建取引…を行つた場合には、当該外貨建取引の金額の円換算額…は、当該外貨建取引を行つた時における外国為替の売買相場により換算した金額とする。

そして、法人税法基本通達13の2-1-2では、当該規定の「外国為替の売買相場」について次のように規定されています。

法第61条の8第1項《外貨建取引の換算》…の規定に基づく円換算…は、その取引を計上すべき日(以下この章において「取引日」という。)における対顧客直物電信売相場(以下この章において「電信売相場」という。)と対顧客直物電信買相場(以下この章において「電信買相場」という。)の仲値(以下この章において「電信売買相場の仲値」という。)による。

つまり、

領収書に印字された日電信売買相場の仲値(TTMレート)

で円換算するのが原則的な考え方と言えます。

なお、領収書に印字された日が休日にあたる等で当日のレートがない場合には、その直前のレート存在日のレートで円換算をすることとなります。

(例)
領収書の日付 2019年7月6日
⇒ 土曜日にあたるためレートがない。
⇒ 2019年7月5日(金)のレートを使用する。

例外的な考え方

電信売買相場の仲値でなくてもよい

電信売買相場の仲値は、

(電信売相場(TTSレート)+電信買相場(TTBレート))÷2

で計算されます。

為替レートの入手方法は後述しますが、入手先によっては、電信売相場と電信買相場しか公表されておらず、この算式にあてはめて自分で計算しなければなりません。

しかし、先ほど見た法人税法基本通達13の2-1-2には次のような続きがあります。

ただし、継続適用を条件として、売上その他の収益又は資産については取引日の電信買相場、仕入その他の費用(原価及び損失を含む。以下この章において同じ。)又は負債については取引日の電信売相場によることができるものとする。

つまり、わざわざ計算せずに、電信売相場を使って円換算することもできるのです。

ただし、継続適用が条件なので、「この領収書は仲値で、あの領収書は電信売相場で」なんてことはできません。一度、電信売相場で円換算すると決めたら、最低1事業年度は、その方法で処理をしなければなりません。

領収書に印字された日でなくてもよい

領収書が数枚であれば、その日のレートを調べるのはそんなに大変ではないですね。
でも、これが何十枚もあったらどうでしょうか?

ひとつひとつレートを調べる??

原則に沿っているので全く問題はありませんが、非常に面倒ですよね。私なら気が狂ってしまうかもしれません。

そこで、法人税法基本通達13の2-1-2の(注)2には、次のような救世主的な規定があります。

上記の円換算に当たっては、継続適用を条件として、当該外貨建取引の内容に応じてそれぞれ合理的と認められる次のような外国為替の売買相場(以下この章において「為替相場」という。)も使用することができる。

(1) 取引日の属する月若しくは週の前月若しくは前週の末日又は当月若しくは当週の初日の電信買相場若しくは電信売相場又はこれらの日における電信売買相場の仲値

「若しくは」とか「又は」が入り乱れていて非常に読みにくい規定ですが、わかりやすくまとめると次の通りです。

たとえば、7月1日から7月31日までの領収書を6月30日のレート(①)で円換算することができます。

ただし、こちらも継続適用が条件なので、「7月分は6月30日のレート(①)で、8月分は週ごとにその週の初日のレート(④)で、9月分は9月1日のレート(②)で」などコロコロと変えることはできませんので、注意してください。

その他の日のレートはだめなの??

冒頭で書きましたが、カード引落日や経費精算日、帰国日などのレートを使うのはだめなのでしょうか?

法人税法基本通達13の2-1-2の(注)2では、もう一つ例外的なレートが規定されています。

(2) 取引日の属する月の前月又は前週の平均相場のように1月以内の一定期間における電信売買相場の仲値、電信買相場又は電信売相場の平均値

領収書に印字された日から「1月以内の一定期間・・・の平均値」ならば認められますが、「1月以内の一定期間・・・のある特定の日」まで許容されているように私には読めません。

実務上は、カード引落日や経費精算日、帰国日のレートを使っているケースも見受けられます。それらの日のレートが、今まで見てきたレートに比べて大きな差額がなく、継続的にそのような処理を行っていれば、税務署の個別判断でお咎めなしになるかもしれません。しかし、税法にガチガチにあてはめると、何らかの指摘を受けたとしても不思議ではないと考えます。

ですから、個人的には、原則的な考え方、例外的な考え方で説明したレートで進めることをおすすめします。

レートはどこから入手する?

円換算するときにどの時点のレートを用いるかはわかりましたね。では、そのレートは一体どこから入手すればよいのでしょうか?

それについては、法人税法基本通達13の2-1-2の(注)1で次のように規定されています。

本通達の本文の電信売相場、電信買相場及び電信売買相場の仲値については、原則として、その法人の主たる取引金融機関のものによることとするが、法人が、同一の方法により入手等をした合理的なものを継続して使用している場合には、これを認める。

つまり、

原則→メインバンクが公表しているレート

例外→他行や信頼しうる機関が公表しているレート(継続適用が条件)

以上のようにまとめることができます。

おすすめのサイト

レートを公表している金融機関は、実はそんなに多くないのですが、皆さんのメインバンクはいかがでしょうか?

もし、レートを公表していないようであれば、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのホームページで公表されている1990年以降の為替相場がおすすめです。Googleなどで「三菱UFJ 1990年以降の為替相場」で検索していただくと、最上位にヒットするはずです。

そのサイトに入って、真ん中よりやや下あたりまでスクロールすると、1990年以降前月までの為替相場を検索するというブロックがあり、調べたい年月日と通貨を選んで検索すると、当日のレートが表示されます。

そのページを印刷して、領収書とセットで保存をしておけば、バッチリです!!

今回のまとめ

海外で発生した経費を円換算するときに使うレートについてお話ししました。

ビジネスのグローバル化にともない、中小企業でも海外出張が珍しくはなくなり、今までドルの領収書には無縁だった方も、ある日突然遭遇するかもしれませんね。

一目見た瞬間、(どうすればいいの?)と思われるかもしれませんが、今回お話しした内容を参考にして、適切な円換算をして経費計上を行ってみてください。

ジル観察日記

前回の記事に続き、幼少期ジル第2弾です。

今は肉球はちょっと黒っぽいのですが、この頃はピンクだったんですね。

そして、かわいい寝顔はちっちゃい時から変わらず。癒されます♪