私が考える法人化のデメリット

個人事業を何年も続けていると「法人化」も念頭に浮かんでくるのではないでしょうか。

法人化には、所得税と法人税の税率差や赤字(欠損金)の繰越期間の違いなどを利用した節税対策、外部への信用度などのメリットがあります。

しかし、メリットがあるのならば、当然デメリットもあります。今回は、複数あるデメリットのなかで影響度が高いと考えるものをお話しします。

影響度が高い=私の独断と偏見によっております。他の税理士さんからすると「えー!!」と思われることもあるかもしれませんが、そこのところはどうかご理解ください。

赤字決算でも税金を払わないといけない

収入から費用を差し引いて赤字のとき、個人であれば所得税、事業税、住民税はかかってきません。

しかし、法人は、法人税、事業税こそかかってきませんが、住民税だけは納税額が発生します。「均等割」と呼ばれるものです。

資本金や従業者の数によって納税額は各々の自治体が定めていますが、東京都23区内に本店がある法人の場合、最低でも7万円は税金を払わないといけません。

※詳しい税額はコチラをご参照ください。

登記のためにお金がかかる

個人事業主は、税務署に開業届を提出するだけで事業を始めることができます。

しかし、法人は設立をするとき、税務署に開業届(「法人設立届出書」といいます。)を提出する前に、法人名、所在地、事業目的、代表者名、代表者所在地などを登記しなければなりません。また、すでに登記している内容に変更が生じた場合には、変更のための登記手続きを行う必要があります。

これらの登記は法務局で行うこととなりますが、申請書を書いて提出するだけで終わりというわけではありません。申請書を提出する際に所定の登録免許税を納付しなければなりません。たとえば、株式会社を設立するときの登記では資本金の額の7/1000(最低税額15万円)がかかります。

※詳しい税額は国税庁のタックスアンサー:No.7191 登録免許税の税額表『2 会社の商業登記(主なもの)』をご参照ください。

そして、登記の手続を司法書士に依頼した場合、司法書士への報酬も発生します。

法人税の申告書を作ることが大変

法人税の知識がないとご自身で作るのは至難の業だと思います。(適当に作るということであれば話は別ですが。)

なぜなら、法人税の申告書には別表というものを添付しなければならないためです。たとえば、交際費は、中小企業の場合年間800万円を超えるとその超える部分の金額は、税務上の経費(損金)に算入することが認められないのですが、その算定は別表15で行います。

別表は、国税庁のホームページに揚げられているとおり、複数あります。すべてを添付する必要はなく、ご自身の申告で必要なものだけでよいのですが、添付がないと優遇措置(税額控除や特別償却など)の適用を受けられないといった制度もあります。なので、「ご自身の申告で必要」かどうかはちゃんと調べなければなりません。自己判断で添付不要としてしまうと、後々取り返しのつかないことになってしまいます。

その他、法人事業概況説明書や申告内容によっては別表に付随する付表適用額明細書出資関係図といった書面も添付しなければなりません。

ここまでお読みいただいて、個人の確定申告書とは色合いが違うことをお感じいただけるのではないでしょうか。(めんどくさそうですよね?)

もちろん税理士に依頼する手もありますが、支払う報酬が個人の確定申告よりも増えてしまうのは間違いないと思います。

お金を好き勝手に引き出せなくなる

個人事業主の場合、いつでも好き勝手に事業用口座からお金を引き出すことができます。

しかし、法人の場合、法人の口座からお金を引き出す方法は、主に給料配当貸付の3つに限られます。そして、それぞれの方法について制約があります。

給 料

給料=役員報酬は、定時株主総会で支給する金額を決めますが、業績が悪化した場合など特殊な事情がない限り、一度決めた金額は、次の定時株主総会まで変更することはできません。

正確には、金額を変更してもかまわないのですが、損金で計上できなくなる部分が発生します。したがって、好き勝手に引き出していると損金計上できないという問題に直面します。

配 当

会社法では、株主総会(臨時株主総会含む)の決議を経ればいつでも配当を行うことができるとされています。

しかし、配当できる金額には限度額があり、また、そもそも純資産額が300万円未満の場合には配当を出すことができません。もしこれらのルールを逸脱していた場合には違法配当となるため、法人へ配当相当額を返金しなければなりません。

貸 付

株主総会または取締役会の決議を経て、会社と役員の間で契約書を交わすことにより、貸付も配当と同様にいつでも行うことができます。また、配当のような限度額もありませんので、自由に貸付額は決められます。

ですが、貸付である以上返済しなければなりません。

そして、利息を発生させる必要があります。無利息で貸付を行っていれば、税務調査で適正な利率で計算した利息相当額が役員に対する給与と認定され源泉徴収もれの指摘を受けることになるでしょう。

また、役員に貸付金があると金融機関の心象を悪くしてしまう可能性が大です。当然ですよね。法人の運転資金として貸したお金が又貸しされ、もしかしたら役員の私的用途に使われる可能性があるのですから。金融機関から融資を受けている、あるいは受ける予定の場合には、貸付は極力避けるべきと言えます。

自由度が失われる

役員も株主もおひとりの法人であれば関係がありませんが、たとえば、第三者が役員や株主となっている場合には、トラブルの原因となる可能性があります。

たとえば、重要事項を決定するときに意見が合わなかったりとか法人の運営にいちいち口を挟んできたりとか。せっかく法人化したのに、自分の思うとおりに経営できないととなるとストレスが溜まってしまいますよね。

自分の意に沿わない役員を解任したり、株主から株を強制買取する手段もありますが、それをやると確実にしこりが残ります。ですから、法人を設立するときには、役員・株主の構成を慎重に考えるようにしてください。

雑記

デメリットを強調すると、

「お前は法人化否定派か?」

と言われてしまいそうですが、決してそんなことはありません。

ただ、メリットばかりに目を奪われるのではなく、その裏にあるデメリットにも気を配っていただいたうえで、今このタイミングでの法人化が最適な判断なのかをご検討いただきたいと思います。

ジル観察日記

この写真の撮影者は妻。

探し回ってようやく見つけ、ドアの隙間から甘えた表情を見せるジルです。