何でもかんでも経費にしたいという願望は、誰しもが持つもの。
実際、私も「先生、××は経費にしちゃだめですか?」と、どう見ても(それはダメでしょ!)と思うようなものについてご質問を受けることがあります。
そのお気持ちわからなくもないですが、そんなに簡単ではありません。
経費の色はシロ、クロ、グレー
所得税法第37条第1項(*条文は末尾をご参照に。以下同じ。)では、不動産所得や事業所得などの必要経費が定義されています。また、法人税法第22条第3項では、損金の額に算入すべき金額について規定されています。条文の言い回しは多少異なりますが、必要経費・損金として認められる金額は以下のとおりとなります。
1.総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
2.その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
この1.と2.のどちらかに当てはまるものは、経費としてシロと言うことができます。
たとえば、
・商品を売るための仕入
・社員さんのお給料
・店舗の家賃
・仕事で使う機材、備品
など明らかに業務に必要なものは経費で何ら問題はありません。
※仕入の在庫など経費計上の”タイミング”という別の問題はありますので、ご注意ください。
逆に、1.または2.に当てはまらないものは、経費としてクロです。
たとえば、
・知り合いと飲みに行った飲食代
・家族旅行の費用
・個人的趣味で購入した物品代
などで、簡潔に業務とは全く関連がないものといえば、ご理解いただけるのではないでしょうか。この類のものは、経費として認められません。
多くの方がクロはダメとわかっていらっしゃるのですが、たまに(バレなければいいだろう)的な考えで、無理やり計上しようとする人もいます。しかし、税務署も節穴ではありません。過去の数値や他の経費の数値と比較して不自然なものは一発で見つかります。
「この間の税務調査では何も言われなかったから、今回も経費にして問題はないでしょう?」と仰る人もいます。それはたまたま税務署の目に留まらなかった、あるいは、目に留まったけれど、金額が小さかったり他の指摘事項が多かったため、何も言われなかったにすぎません。
クロは見つかると即否認→追徴+罰金で、リスク以外何もありません。絶対に経費にするのは避けるべきです。
さて、一番困るのはグレーです。
業務に関連するのか関連しないのか、関連するとしてもどの程度なのか判然としないものです。
先ほど
・知り合いと飲みに行った飲食代
はクロとお話ししましたが、全くのプライベートであったとしたらそのとおりです。しかし、その知り合いと事業に関連する情報交換を行っていたとしたら、どうでしょうか?
また、
・家族旅行の費用
も、カメラマンの方が撮影を兼ねて行っていたとしたらどうなるでしょうか?
必ずしもクロとは言えなくなるのではないでしょうか?
グレーをどのように経費にするか
結論から言うと、税務署から問い詰められたときに業務に関連していることをちゃんと説明できればよいのです。
「全額のうちの〇〇パーセントを経費にしましょう」になったとしても、その割合は適当に決めるのではなく、根拠がしっかりしたものでなければなりません。たとえば、個人事業主の方が自宅兼事務所の家賃を計上するときには、間取り図などで事務所として利用している部分を明らかにして、その部分の面積÷全面積を割合にするといった感じです。
説明や根拠がしっかりしたものであれば、税務署もそう易々と否認することはできないでしょう。もし反論するのであれば、税務署側も納税者が納得するような説明や根拠の提示をしなければなりませんので。
しかし、業務に関連していることの説明が滅茶苦茶であったり、割合の根拠がなかったりすると、、、どのように判断されるかは言わずもがなですね。
雑記
何でもかんでも経費に落とすのは無理ということをご理解いただけましたでしょうか。
争いになる多くのケースがグレーに色分けされるものたちです。
これらを経費にするのであれば、税務署に必ず目を付けられると思って、先ほどお話した業務に関連していることの説明が必ずできるようにしておきましょう。
今回の記事でご紹介した条文
所得税法
第三十七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
法人税法
第二十二条 (中略)
3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの