「赤字だと税金はかからない」
このように思われている方がいますが、実際は違います。
住民税は、所得の発生有無に関係なく発生する均等割というものがあります。ただ、この均等割は少額ですし、個人の方であれば所得があまりにも少ない場合には免除されます。
一方、消費税は、利益に連動しないので赤字でも納税額が発生し、結構な金額となることもあります。
なぜ?
たとえば、以下のような設例で考えてみましょう。
売上高・・・5,000万円(税抜金額、以下同じ。) |
仕入高・・・3,000万円 |
給与・賞与と社会保険料の事業主負担額・・・1,500万円 |
その他の費用・・・1,000万円 |
売上高は課税売上、仕入高、その他の費用は課税仕入10%に該当する。 |
会計上の損益は、5,000万円-(3,000万円+1,500万円+1,000万円)=▲500万円と赤字が計上されます。
しかし、消費税計算上の損益は、5,000万円-(3,000万円+1,000万円)=1,000万円と黒字になります。
・給与・賞与と社会保険料の事業主負担額 1,500万円
が不課税取引に該当するためです。
したがって、1,000万円×10%=100万円の納税額が発生します。
不課税取引や非課税取引に該当する費用は、消費税計算上の損益では収入から差し引くことができません。よって、費用総額のなかでこれらに該当する費用の占める割合が大きければ大きいほど、会計上の損益は赤字なのに消費税計算上の損益は黒字になるといった逆転現象が起こりやすくなります。
なお、不課税取引や非課税取引に該当する費用として給与・賞与と社会保険料の事業主負担額を取り上げましたが、他にも該当するものはたくさんあります。ここで取り上げると収拾がつかなくなるので、国税庁のタックスアンサーをご覧になってください。
参考①:No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
参考②:No.6201 非課税となる取引
ただ、一般的な商売をされている事業者の方であれば、給与・賞与と社会保険料の事業主負担額が多額になり、その他はチョロチョロとした金額しかないというケースが多いです。
なので、上の例のように、
売上-給与・賞与-社会保険料の事業主負担額
を消費税計算上の損益と考えてもらってもよいのかなと思います。
問題は?
消費税の納税資金です。
会計上の損益が赤字ということは、その年度お金を稼げていない可能性があります。
先ほどの例で、すべて現金取引と仮定しますと、入金5,000万円に対して支払が5,500万円なので、500万円お金が減っていることになります。
もともと潤沢な資金を持っていたのならば、500万円のお金が減ったとしても、100万円の納税は痛くも痒くもないはずです。しかし、自転車操業でカツカツの状況であったとしたら、この100万円の納税は大ダメージです。
実際は、入金のサイトや支払のサイト、資金流出のない減価償却費の計上有無を考慮しなければなりませんが、納税時期までの資金繰りをイメージして、必要であれば納税資金を確保しておく方法を考えなければなりませんね。
※納税資金の確保は、前回の記事「【ミニ投稿】消費税を払えるか心配。だったら、納税資金を貯める口座を作った方がいいかも。」をご参照ください。
雑記
最近、取り上げた内容に近いご相談を受けることが相次いだため、なんとなく書き留めておきたくて、消費税をテーマにミニ投稿記事を連発させていただきました。
消費税は簡単そうで奥が深い、、、今しみじみと感じています。
もしかしたらこの連発の流れがしばらく続くかもしれません。悪しからずご了承を。