【シミュレーション】退職金の源泉徴収税額を計算しましょう

退職金は定期的に発生するものではないので、税金計算をするときに戸惑われた経験があるのではないでしょうか。

支給の仕方によっては複雑な計算になることもありますが、今回はケースとして一番多い従業員が退職するときの税金計算を取り上げてみます。

所得税の計算は、退職所得申告書の提出有無で変わる

退職金からは所得税住民税を徴収しなければなりません。

その計算方法をまとめると、次のとおりです。

所得税 住民税
退職所得申告書の提出 事業主の処理
(源泉徴収)
退職者の処理
(確定申告)
事業主の処理
(源泉徴収)
退職者の処理
(確定申告)
あり 退職所得×税率 不要 退職所得×税率 不要
なし 退職金×20% 必要
(退職所得×税率)

所得税は、退職者から退職所得申告書(退職所得の需給に関する申告書)の提出があるかないかによって、変わってきます。

提出があれば、事業主が退職所得に退職所得の源泉徴収税額の速算表に基づく税率をかけて源泉徴収すれば、課税関係は終了です。
しかし、提出がなければ、事業主は退職金に対して一律に20%で源泉徴収を行い、退職者は確定申告して精算を行います。退職所得の金額次第ですが、確定申告を行うことで還付金が発生するケースが多いです。

一方、住民税は非常にわかりやすいです。

退職所得申告書の提出があってもなくても、事業主が退職所得に税率をかけて源泉徴収すれば、課税関係は終了です。退職者は何もする必要はありません。

この計算方法は退職所得申告書の提出がある場合の所得税と同じですが、住民税は、市町村民税と道府県民税に分かれており、それぞれの税率は、
・市町村民税 6%
・道府県民税 4%
と一律になっている点が異なります。

なお、東京都在住の退職者は、市町村民税=特別区民税、道府県民税=都民税となります。

退職所得申告書の提出は義務なのか?

お客様からよく質問をされます。

法律上は、所得税法第203条で「国内において退職手当等の支払を受ける居住者は・・・申告書を・・・提出しなければならない。」と規定されていて、「・・・できる」規定でないので、提出は義務のように考えられます。

しかし、提出がない場合の計算方法まで規定をされており、また、罰則規定もないところを鑑みると、強制力を伴うような義務ではないのかなという気がします。

とはいえ、退職者の側にたつと、確定申告の手間を省けるのであれば、それにこしたことはないです。

最終的には退職者本人の意思に委ねられますが、制度自体を知らない人もいるでしょうから、提出有無による違いを説明し、提出を促すようにもっていくのが長年貢献してくれた人へのちょっとした親切なのではないでしょうか。

退職所得ならびに退職所得控除額の求め方

退職所得申告書の提出がある場合の所得税、住民税は、税率をかける対象が退職所得であることは上で見たとおりですが、退職所得=退職金ではありません。退職所得は次の算式で算出します。

退職所得=(退職金-退職所得控除額)×1/2

算式中の退職所得控除額は、勤続年数(1年未満の端数切上)により計算方法が異なりますが、いたってシンプルです。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数 ※算出額が80万円未満の場合、80万円
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

注意点その1

この計算方法は、役員が受け取る退職金でも同様です。

ただし、役員等勤続年数が5年以下の方は、受け取る退職金のうち役員等勤続年数に対応する部分の金額は、退職金-退職所得控除額となり、×1/2の適用はありません。

注意点その2

冒頭でも触れましたが、支給の仕方によっては計算方法が複雑になります。

・年をまたいで退職金を複数回受け取る場合

・同一年中に他の勤務先で退職金を受け取っていた場合

・勤続年数に一般従業員としての勤続期間と5年以下の役員としての勤続期間が混在する場合

といったケースです。

国税庁のタックスアンサーで具体例付きで取り上げられているものもありますが、別の機会にこちらのブログでも取り上げてみたいと思っています。

退職所得の源泉徴収票の見方

ところで、退職所得の源泉徴収票を見ると、少し驚かれるかもしれません。

金額を記載する欄が3段あり、「どこに書くんだ?」となりますよね。

それぞれ区分欄に根拠条文が載ってはいますが、次のようになります。

・1段目→退職所得申告書の提出があり、同じ年に退職金を他からもらっていない場合

・2段目→退職所得申告書の提出があり、同じ年に退職金を他からももらっている場合

・3段目→退職所得申告書の提出がない場合

税額シミュレーション

最後に、勤続年数と退職金額を入力すると、退職所得申告書の提出がある場合の所得税と住民税を自動計算するシミュレーションをご紹介します。サイトポリシーの免責事項をご理解の上、本シミュレーションをご活用ください。

ジル観察日記

ZOZOTOWNからこんなものが届く、、、わけありませんね(笑)