書類は何年間保存しておかないといけないの?

経理関係、税務関係の書類って、結構な分量になりますよね。

(決算が終わったので捨てたい)と思っても、すぐに捨てるのは御法度。

法律で定められた保存期間中は、大切に保存しなければなりません。

今回はその保存期間についてお話しします。

法人の場合

税法上の保存期間

原則は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。

しかし、青色申告を行った事業年度で、欠損金が生じる申告の場合には例外があります。

その申告を行った事業年度が、平成20年4月1日以後に終了した事業年度であれば9年間となります。

また、平成30年4月1日以後に開始する事業年度については10年間となります。

過去の年度の書類を廃棄しようか迷っているときには、

・その年度に青色申告をしていたか?

・青色申告をしていた場合、その年度で欠損金が生じていたか?

を法人税確定申告書の別表一で確認してみてください。

両方とも該当しない、どちらか一つにしか該当しないようであれば、保存期間は7年間になります。

申告書や届出書、年末調整書類の保存期間は?

今お話ししたのは帳簿書類の保存期間です。

帳簿書類は、国税庁のタックスアンサー(No.5930 帳簿書類等の保存期間及び保存方法)で次のように例示されています。

帳簿 総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳
書類 棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書

※※例示はありませんが、預金通帳、給与・賞与台帳、タイムカード、領収書、経費精算書、請求書、カード明細、融資の返済予定表なども対象になると考えられます。

経理関係の色合いが強いものと理解していただければよいかと思いますが、では、申告書や届出書、従業員から受け取った扶養控除等申告書など税務関係の書類の保存期間はどうなっているのでしょうか?

扶養控除等申告書など年末調整に関係する書類は、所得税法施行規則第76条の3で規定されています。

提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間です。

たとえば、令和1年分の扶養控除等申告書や保険料控除申告書は、令和2年1月11日から7年間=令和9年1月10日まで保存しておかなければなりません。

一方、申告書や届出書は、、、規定がありません!!

これをどう考えましょうか?

「すぐに捨ててもいい」「いや、ずっと持っておくべきだ」など頭に思い浮かびますが、書類の保存期間に合わせるのが最善と私は考えています。

(私が調べた限りはでして、もし規定をご存じの方がいらっしゃいましたら、ご一報ください。)

会社法上の保存期間

会社法は、法人の設立、組織、運営及び管理について規定した法律です。

そのなかの第432条と第435条で株式会社の書類の保存期間が規定されています。

株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

【引用規定】会社法第432条第2項

株式会社は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。

【引用規定】会社法第435条第4項

【注】計算書類とは、「貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの」と規定されています。一般的な中小の株式会社の場合、貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書、株主資本等変動計算書、個別注記表が該当すると考えられます。

税法で規定されている保存期間とは違います。

税務調査対策としては税法上の保存期間だけ保存しておけば大丈夫ですが、たとえば、会社の債権者や利害関係者向けには会社法上の保存期間に従わなければなりません。

そこでポイントが「その事業に関する重要な資料」で、どこまでの帳簿・書類がここに含まれるかを考える必要があります。

重要でない資料であれば、そもそも会社法の保存対象とならないわけですから、税法上の保存期間だけ保存しておけばOKです。

ただ、何が重要で何が重要でないかは、客観的な判断材料があるわけでなく、その会社の実態によって判断していくこととなります。

簡単にその判断ができるのであればよいのですが、難儀であったり、判断できるけど時間がかかってしまうということであれば、すべてを重要な資料と考えて、会社法上の保存期間に従っておくのも一案かもしれません。

個人事業主の場合

個人事業主には会社法の適用はありませんし、類似する法律も存在しません。

したがって、税法で規定する保存期間にのみ気を配ればよいのですが、青色申告者か白色申告者かで保存期間が変わってきます。

青色申告者

所得税法施行規則第63条で規定されています。

先ほど帳簿書類の例示を取り上げましたが、個人事業主は、以下の表のように書類の種類によって保存期間が細分化されています。

なお、保存期間はその年分の確定申告期限の翌日からの起算となります。たとえば、令和1年分であれば、令和2年3月16日から〇年間という考え方です。

保存対象書類 保存期間
帳簿 総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳など 7年間
書類 棚卸表、貸借対照表、損益計算書 7年間
領収証、小切手控、預金通帳、借用証など現金預金取引に関係するもの 7年間※
請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など 5年間

※その年分の2年前の不動産所得および事業所得が300万円以下の場合には5年間となります。

白色申告者

所得税法施行規則第102条で規定されています。

青色申告者と同じように書類の種類によって保存期間が細分化されています。

保存対象書類 保存期間
帳簿 総収入金額及び必要経費を記載した帳簿 7年間
その他の帳簿 5年間
書類 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 5年間
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書など 5年間

白色申告者も平成26年分から記帳の義務が課せられました。

もし青色申告者と同じように総勘定元帳を作成し、それを7年間保存すれば、その他の帳簿(仕訳帳や現金出納帳など)は5年間の保存でよいことになります。

また、白色申告者は簡易な方法による記帳も認められていて、たとえば、以下のようにExcelで集計したものを帳簿として保存することも可能です。

この場合には、このデータが「総収入金額及び必要経費を記載した帳簿」にあたるため、7年間保存しなければなりません。

なお、税務署へ事前に届け出ることでデータによる保存も認められますが、帳簿書類は書類に印刷して保存するのが原則です。

雑記

ここまで法律に規定されている保存期間をお話ししました。

事業形態やその年度の申告状況、書類の種類によって保存期間が変わり頭が混乱しそうですね。

というわけで、

法人…10年間

個人事業主…7年間

とざっくり覚えておいてください。

このとおり実践していただければ、法律上は問題ありませんので。

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ラグビーのワールドカップ、盛り上がりましたね!!

それに感化されたのか、この方も”ハカ顔”を・・・。